FAQ - HSA4051 / HSA4052 / HSA4101
機種選定
Q: 一般的な機種選定の手順は?
A: 本製品は定電圧源なので、負荷に印加したい電圧と周波数から絞り込み、次に必要な電流容量で選びます。周波数は500kHzモデル、1MHzモデル、10MHzモデルがあります。それぞれ出力電圧は300Vp-p、150Vp-p、142Vp-pです。500kHzモデルと1MHzモデルには、それぞれ電流容量の異なるラインナップがあります。
選定例をご紹介します。
2μFの容量性負荷を、片側150Vピーク、最大300Hzの正弦波で駆動する場合
片側150Vピークなので、HSA4051、またはHSA4052が選択肢です。周波数帯域も500kHzまで伸びているので条件に合致します。次に、必要な電流容量は以下のように求められます。
Z(負荷インピーダンス) = 1 / (2πfC) = 1 / (2 × π × 300 × 2 × 10-6) = 265.26Ω
I = 150[V] / Z = 150 / 265.26 = 0.56A
したがって、HSA4051が1Armsの出力なので片側1.41Aピークとなり、要求を満たします。今後もっと電流を流す可能性がある場合にはHSA4052も選択肢です。
Q: 負荷のインピーダンスと印加したい電力が決まっている場合の機種選定手順は?
A: 負荷と電力から電流を算出してください。さらに電流と負荷から電圧を算出することができるので、これらの電流、電圧とご希望の周波数から、選定が可能です。
選定例をご紹介します。
インピーダンス100Ωの負荷に対して、50Wの200kHz交流電力を加える場合
電力には以下の関係があるので、それぞれ数値を代入します。
W = I ・ V = I2 ・ R
I = √ (50 / 100) = 0.71Arms
さらに、
V = 0.71 × 100 = 71Vrms
したがって、71Vrms = 約200Vp-p、0.71Armsが求められる仕様となり、電圧と周波数からHSA4051、HSA4052が対象になります。この場合HSA4051が条件に合致しますが、今後、電流をもっと増やす可能性がある場合にはHSA4052も選択肢です。
出力
Q: マルチファンクションジェネレータ WF1974を信号源としてHSAで増幅した。WFの出力設定電圧値を利得倍した出力電圧を期待したのに、HSAからはその半分しか出ない。これは正常?このときHSAの入力インピーダンス、WFの出力インピーダンスともに50Ω。
A: 正常です。HSAの入力インピーダンス、WFの出力インピーダンスともに50Ωなので、WF1974の信号出力は分圧されて、50 / (50+50) = 1 / 2、つまり出力設定値の半分の電圧がHSAの入力端に印加されます。この信号がHSAの利得分だけ増幅されます。
信号源の出力設定電圧とHSAの出力との関係を具体例でご紹介します。
信号源の出力インピーダンスとHSAの入力インピーダンスともに50Ωの場合
信号源の出力設定電圧はHSAの入力端に印加したい電圧の2倍にします。
例)
HSAの利得を100倍とし、出力電圧50Vp-pを出す場合、HSA入力端電圧は0.5Vp-pが必要です。その場合、信号源の設定値は
0.5 × 2 = 1V
です。
上記以外の信号源出力インピーダンスとHSA入力インピーダンスの場合
信号源の出力設定電圧はHSAの入力端に印加したい電圧の
( 1 + 信号源の出力インピーダンス/HSAの入力インピーダンス ) 倍
にします。
例)
HSAの利得を100倍とし、出力電圧50Vp-pを出す場合、HSA入力端電圧は0.5Vp-pが必要です。信号源の出力インピーダンスが100Ω、HSAの入力インピーダンスが600Ωの場合、信号源の設定値は
0.5 × ( 1 + 100 / 600 ) = 0.58V
です。
Q: 電圧を増やすために、バイポーラ電源を直列接続することは可能ですか?
A: 直列接続はできませんが、平衡出力(BTL接続)により電圧と電力を2倍にすることが可能です。 詳しくは取扱説明書の「平衡出力による出力の増大」を参照ください。
Q: 電流を増やすために、バイポーラ電源の並列接続は可能ですか?
A: 並列接続はできませんが、電流合成ユニット(特注品、別途打合せ必要)により、増加が可能な場合もあります。詳しくは、当社営業までお問い合わせください。また、周波数150kHz以下で使用する場合には、電流の大きなバイポーラ電源 BPシリーズもございます。
Q: 直流50Vを出力するにはどうすればよい?
A: 直流は以下の2つの方法で出力可能です。
- HSA本体の直流バイアス機能を使用する。
HSAはすべての機種で直流出力可能です。 各機種の出力可能な最大直流バイアス電圧は以下のとおりです。
HSA4011 | HSA4012 | HSA4014 | HSA4051 | HSA4052 | HSA4101 | |
直流バイアス電圧 | ±50V | ±100V | ±100V | ±200V | ±200V | ±70V |
- 外部の信号源から直流を入力して、増幅する。
Q: 仕様にはスルーレートが600V/μs typ.などとあるが、どの機種も最大出力電圧の立ち上がり時間は1μs以内と考えてよい?
A: 実際の立ち上がり時間は負荷の性質と増幅器の電流容量に依存します。抵抗負荷であればご理解の通りですが、例えば、容量性負荷だと時間がかかります。
Q: 容量性負荷に対して高速な立ち上がりで電圧を印加したい。どのくらいの立ち上がり時間が得られる?
A: 立ち上がり時間は主としてコンデンサの基本的な公式によって決まります。実際には負荷の容量とバイポーラ電源の電流容量に依存します。
例を下記に示します。
HSA4011を用いて、20μFのコンデンサに+5Vを高速な立ち上がり時間で印加する場合
上昇電圧:V、電流:I、コンデンサのキャパシタンス:C、立ち上がり時間:T とすると、
一般にCV = ITが成り立つので、
T = CV / I
C = 20μF、V = 5V、I = 1.41Apk(HSA4011の最大電流1Armsのピーク値換算)を代入すると、
T = ( 20 × 10-6 × 5) / 1.41 = 約71μs
の立ち上がり時間が得られます。
さらに、倍の電流を出力できるHSA4012の場合には、下記ようにさらに高速の立ち上がりが得られます。
T = ( 20 × 10-6 × 5 ) / 2.81 = 約36μs
動作
Q: OVLD[OVERLOAD]ランプが点灯しました。この意味は?
A: 過負荷により、保護回路が動作したことを示します。保護回路が動作すると、出力電流が仕様または最大定格内になるように自動的に電圧が低下します。保護回路が動作しても出力電流を最大定格内におさめられない場合は、安全のため出力オフ、またはバイポーラ電源自体の電源をオフすることがあります。
Q: OVLD[OVERLOAD]ランプが点灯しました。対処方法は?
A: 原因として過電流が流れている可能性があります。以下のような対策があります。
- 信号源の出力電圧を下げる。
- 利得設定を見直し、出力電圧を下げる。
- 負荷のインピーダンスが大きくなるように出力周波数を変える。
Q: OVLDが点灯した状態で使用するとどうなりますか?
A: そのまま続けていると、内部温度が上昇して保護回路が働き、電源が落ちる場合があります。また設定した波形とは異なる波形が出力されます。負荷および電源の安全を考慮してオーバロード状態での継続使用はおやめください。
Q: 電源をONした時に、一瞬OVLDのLEDが点滅するが、これは正常動作ですか?
A: 正常です。
Q: 負荷がショートしてもバイポーラ電源本体は保護されますか?
A: 保護回路が働き、OVLD[OVERLOAD]ランプが点灯して、出力が低下またはオフしますが、場合によっては電源本体が破損する可能性があります。また、この状態では、設定と異なる出力電圧(一般的には保護動作の結果、電圧や電流が設定より小さくなる)が負荷に印加されます。設定と異なる電圧が印加されることにより、負荷に問題が発生する場合があるのでご注意ください。
仕様・機能
Q: 仕様に記載の最大電圧の見方は?
A: HSAシリーズは周波数によって最大出力電圧と最大出力電流が異なります。したがって、仕様では周波数範囲ごとに最大電圧を定格抵抗負荷とともに示しています。また、直流を含む場合と交流のみの場合では最大出力電圧が異なります。
HSA4012とHSA4101の例を紹介します。
HSA4012の場合
- 40Hz~500kHzの範囲では、電圧50Vrms、電流2Armsが得られます。その時の定格負荷RLは25Ωです。
- 上記より広い20Hz~1MHzの周波数範囲では、低周波域での出力電流制限と高周波域での出力電圧の制限によって、出力できる電圧は40Vrmsとなります。
- DCを含む場合には、出力電圧の周波数依存性により、DC~100kHz、DC~500kHz、DC~1MHzの各範囲で、出力電圧範囲は±75V、±70V、±55Vです。その時の定格負荷 RLは75Ωです。
- -25V~+125Vレンジでは出力電圧の周波数依存性によってDC~100kHz、DC~500kHz、DC~1MHzの各範囲で、出力電圧範囲は-25V~+125V、-20V~+120V、-5V~+105Vとなります。その時の定格負荷 RLは125Ωです。
- -125V~+25Vレンジでは、DC~100kHz、DC~500kHz、DC~1MHzの各範囲で、出力電圧範囲は-125V~+25V、-120V~+20V、-105V~+5Vとなります。その時の定格負荷 RLは125Ωです。
HSA4101の場合
- 40Hz~100kHzの範囲では、電圧50Vrms、電流1Armsが得られます。その時の定格負荷RLは50Ωです。
- 上記より広い100kHz~1MHz、1MHz~10MHz、10MHz~20MHz、の各周波数範囲では、高周波域での電圧の制限によって、出力できる最大電圧は各々46Vrms、35Vrms、17Vrmsとなります。
- DCを含む低周波領域では、出力電流の周波数依存性によって最大±71Vを出力可能です。その時の定格負荷 RLは71Ωです。
- 実際の使用にあたっては、交流のピーク値と、直流および交流の平均値での電流制限があります。
Q: 実際の負荷インピーダンスが定格負荷抵抗値より低い場合、出力はどのように制限されますか?
A: 設定できる電圧が低くなります。周波数領域にもよりますが、定格負荷抵抗値では出力電圧と出力電流の最大値を得られます。この抵抗値よりもインピーダンスが低い負荷をつないだ場合には、最大電流の制限により、出力できる電圧は仕様に記載されている値よりも低く制限されます。また、定格負荷より小さな負荷抵抗を接続した場合、HSAシリーズの出力インダクタンスと負荷抵抗でローパスフィルタが形成され、周波数特性が変化します。
Q: 電流モニタ出力は搭載されていますか?
A: 搭載されていません。HSA4101以外の機種では電流メータで値を見ることが可能です。メータの指示は平均値です。
BTL接続
Q: BTL接続したが、マスタ器とスレーブ器からの出力電圧値が異なる。対処方法は?
A: BTL接続では、接続すると自動的に同じ振幅になるわけではなく、同じ振幅になるようスレーブ側の利得の微調整が必要です。
HSA4051での調整例を示します。
BTL接続により、400Vp-pを出力する場合
マスタ器の主出力の振幅を200Vp-pとします。マスタ器のプリアンプ出力は主出力の1/31.2、出力インピーダンスは150Ωです。
HSA4051のプリアンプ出力(開放)電圧 は約200 × 1 /31.2 = 約6.41Vp-p になります。
スレーブ器の入力にマスタ器のプリアンプ出力をBNCケーブルでつなぎ、スレーブ器の入力インピーダンスを600Ωに設定すると、スレーブ器入力端電圧は以下のようになります。
Vin = 約6.41 × 600 / (150 + 600) = 約5.13Vp-p
スレーブ器でゲイン20倍にすると、出力電圧は
Vout = 約5.13 × 20 = 約103Vp-p
利得微調整器でスレーブ器の出力とマスタ器の主出力と同じ振幅になるように調整します。2倍程度でマスタ器とスレーブ器の出力電圧が同じになります。詳しくは取扱説明書の「平衡出力による出力の増大」を参照してください。
ただし、最大出力電流は1台のみで使用する場合と同じく2.83Ap-pです。
Q: BTL接続したときの負荷の接地方法は?
A: 接地できません。バイポーラ電源の出力片端は筐体に接続されています。筐体は安全上接地しなくてはならないため、負荷端は接地できません。
Q: HSA4051、またはHSA4052を2台使用したBTL接続で0V~+500Vの電圧を出力できますか?
A: 可能です。マスタ器の出力レンジを-250V~+50V、スレーブ器の出力レンジを-50V~+250Vに設定すると、2台のBTL接続により-100V~+ 500Vを出力することができます。
その他
Q: 従来製品の4005、4010、4015、4020、4025、4055の後継機の型名は?
A: 販売終了製品の後継機情報をご覧ください。
Q: HSA4101はリアパネルに外部コントロール入力のマルチコネクタが付いており、外部の機器や接点信号により出力のON/OFF制御が可能とありますが、他の5機種でも可能ですか?
A: HSA4101以外の機種には外部コントロール機能はありません。ただし、改造での対応が可能な場合があります。詳しくは当社営業にお問い合わせください。
Q: 故障しているかどうかはどのように確認しますか?
A: 取扱説明書「簡単な動作チェック」を参照の上、基本的な動作を確認してください。不明点がある場合には当社営業までお問い合わせください。